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【コラム】ストレスとQOLの関係



なぜストレス状態が続くとQOL(生活の質)が低下するのでしょう


ロンドン大学ユニバーシティカレッジ(University College London, UCL)のストレスとQOLの研究では、イギリス国内の多様な職種に就く従業員1,000名以上を対象として、心理的ストレスレベルの測定(Perceived Stress Scale: PSS)を解析しています。


その結果がこちらです。


1. ストレスが身体的健康に与える影響:

慢性的なストレスは睡眠障害や免疫力の低下を引き起こし、身体的健康スコアを著しく低下させた。


2. 精神的健康への影響:

長期的な高ストレス状態は、不安や抑うつのリスクを増加させ、精神的健康スコアを大幅に下げることが確認された。


3. 社会的側面への影響:

高ストレス状態の従業員は、人間関係の質が悪化する傾向が見られ、社会的機能スコアが低下した。


結論


この研究で、職場での慢性的なストレスは、身体的、精神的、社会的な側面を通じて生活の質(QOL)を著しく低下させることが分かったのです。



では、ストレスはなぜ身体に悪影響があるのでしょう。


私たちの身体は、ストレスに直面すると「闘争・逃走反応(fight-or-flight)」と呼ばれるメカニズムを起動します。この過程で分泌されるホルモンの一つがストレスホルモンと呼ばれるコルチゾールです。短期間であれば、コルチゾールはエネルギーを効率よく供給することで集中力を高めるなど有益な働きをします。


ただしコルチゾールは、毛細血管の活動を抑制し、瞬時に血液をドロドロにすることで、闘争や逃走中での出血を最小限にするのです。プレゼンテーションなどで緊張すると冷や汗や掌に汗をかいたり、手足が冷たくなるのもコルチゾールの仕業です。


そのため慢性的なストレスによってコルチゾールの分泌が過剰になると、健康にさまざまな悪影響を及ぼします


コルチゾールの過剰分泌は、免疫機能の低下、睡眠障害、体重増加、さらには脳機能の低下に関連しています。特に重要なのは、慢性ストレスが海馬(記憶や学習を司る脳の部位)を委縮させることです。これにより、脳由来神経栄養因子(Brain-Derived Neurotrophic Factor, BDNF)の分泌が抑制されます。BDNFは神経細胞の成長を助け、神経ネットワークの再構築を促す重要なタンパク質であり、そのためBDNFの不足はうつ病や認知症のリスクも高めます


ストレスを低減し、BDNFの分泌を促すためには、生活習慣の見直しが鍵となります。以下に具体的な方法を挙げます。


1. 運動を習慣化する


適度な有酸素運動や筋力トレーニングは、BDNFの分泌を増加させる効果があります。特にジョギングやウォーキングはストレス軽減に役立ちます。また、自然の中で行う運動はさらなるリラックス効果をもたらします。


2. 良質な睡眠を確保する


睡眠は、ストレスホルモンの分泌を抑えるうえで重要です。寝る前のデジタルデバイスの使用を控え、規則正しい睡眠リズムを作ることで、深い睡眠を得られます。


3. 栄養バランスを意識する


健康な食生活は脳機能に直結します。特に、オメガ3脂肪酸やビタミンB群、マグネシウムを含む食品がBDNFの分泌を促進すると言われています。


4. リラクゼーション法を活用する


瞑想や深呼吸、ヨガなどのリラクゼーション法は、交感神経を鎮めてストレスを緩和する効果があります。これらは心の安定感を育むうえでも有益です。


5. 良い人間関係を築き笑顔が溢れた生活を心がける


ストレス管理において、社会的なつながりは非常に重要です。心を許せる人と交流することで、不安や孤独感を軽減できます。



結論


人と人との交流が生み出す共感や感謝の気持ちは、幸福ホルモンと呼ばれるセロトニンやオキシトシンの分泌を促します。これらのホルモンはストレスを軽減し、心身の回復を助けます。また、笑顔は脳の報酬系を活性化させ、自己肯定感を高める効果もあります


良好な関係性の中で心から笑顔になれる時間を増やすことこそが、コルチゾールによる健康被害を軽減し、BDNFを増やす最も簡単かつ効果的な方法です。健康的な生活を目指す私たちにとって、笑顔とつながりこそが真の財産なのです。


「良い人間関係の中で笑顔で過ごすこと」 がストレスのない心豊かな生活への一歩となるのです。


前回のブログで書いたハーバード大学の成人発達研究でも、人生において最も重要な要素が良好な人間関係であることを示しました。人間関係が健康や幸福感に大きな影響を与えるのです。物質的な豊かさや成功が必ずしも幸福をもたらすわけではなく、周囲との深い絆こそが真の健康と幸福を支える鍵なのです。社会的なつながりを重視し、良好な関係を育むことが、私たちの人生を豊かにし、より長く、より健康的な人生を送るための最も効果的な手段と言えるのです。


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副学長 佐藤豊彦

講義内容:リバースエイジング、ストレスマネジメント

​大学や学会などで脳生理学的見地からマーケティングやブランディングの必要性を提案

SUPERPROJECT CEO

南カリフォルニア大学ジェロントロジー学科通信教育課程修了

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